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田上英樹の発言

2026-06-04 / 参議院 / 内閣委員会 / 内閣委員会

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AIによる自動生成 要約

経済安全保障推進法改正に賛成し、中小企業支援、医療インフラのサイバー対策、半導体などの供給網分析、官民協議会とシンクタンクの早期運用を求めた。

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○参考人(田上英樹君) 地経学研究所の田上と申します。
 本日は、このような意見陳述の機会をいただき、誠にありがとうございます。心より感謝申し上げます。
 私は、民間企業においてリスクマネジメント、産業分析などを長年担当してきた者でございまして、現在はシンクタンクにおきまして経済安全保障と半導体を専門テーマとして分析、提言などをさせていただいている者でございます。
 今回の経済安全保障推進法等の一部改正につきましては賛成の立場にございまして、その賛成のポイント及び取り進め上御留意いただきたい点、将来に向けた期待事項等を申し述べさせていただきたいと思います。
 本推進法につきましては導入議論の時点から大変注目をさせていただいておりましたが、国家安全保障を経済面にも目を配って達成するという経済安全保障の推進のために、それまでなかった様々な取組が網羅されたという点におきまして非常に画期的なものであったと認識しております。そして、施行された後も、重要物資につきましては十一件から十六件に、基幹インフラにつきましても十四分野から十五分野へと適宜必要な対象追加も行われてきたというふうに認識しております。
 経済安全保障領域での官民の対話も格段に増えまして、それまで余り必ずしも理解が深くなかったというふうに言われる方もいらっしゃいますけれども、官から民、民から官の見方がこの分野において相互に成熟してきたという印象も持ってございます。
 国家の安全保障を経済、ビジネスの観点で守れるようにしようという経済安全保障推進法の精神が相当程度官民に行き渡ったという意味では、この法制度が果たした役割は非常に大きかったものと考えております。
 また、政府側からは、民間の経済安全保障の先進企業からのヒアリングなどを踏まえまして、各種のガイドライン、ガイダンス、それからベストプラクティス集、こういったものが相当程度出されております。既に版を二版と重ねているものもございまして、民間企業側の理解もこの間に相当程度高まったのではないかというふうに考えております。
 今回の一部改正につきましては、改正のポイント幾つかございますけれども、それぞれ適切なものと考えております。
 まず、重要物資の安定供給確保につきましては、役務の提供について追加がされました。従来、物資を単体で捉えていましたところ、物資だけあっても、設置、据付けが自国でできなければ結局それがチョークポイントになってしまうということで、海底ケーブルとその敷設という役務が事例として示されておりますけれども、まさに適切な取り進めと考えております。
 当初、手探りで始めた経済安全保障の法制化の土台が完成をいたしまして課題の解像度が上がってきたということで、更に重要な不足点が追加で見えてきたと、こういうことであると思います。日本の経済安全保障対応が着実に進んできていることの証左というふうに捉えてよろしいかと思っております。
 一方、大企業における経済安全保障対応が一定程度進んできていると考えられる中、先ほど白石参考人の御発言にもありましたけれども、中堅・中小企業における対応というのが今後のフォーカスポイントの一つになるというふうに考えております。
 今回の改正の中で、特定重要物資等を供給する事業者につきましても、そうした企業が事業廃止や縮小、移転というようなことを強いられそうになった場合に、それを経済安全保障上の課題と認識して、企業一社ではどうすることもできない場合には、国やサプライチェーン上の関連事業者も含めた連携協力による事業の継続、強化といったことが取り組みしやすい環境をつくるというふうに認識しておりまして、これもまた重要な観点であると考えております。
 次に、基幹インフラですけれども、十五の分野に新しい医療分野というものを追加しまして、具体的には、大学附属病院などと医療DXの基盤となる機構を対象とすることで、万一のサイバーアタックなどによる日本の医療の社会的混乱を防止する意味において重要な変更と考えます。
 また、重要技術につきましても、指定基金協議会による伴走支援が可能な範囲を、Kプログラムを実施している文科省系のJST、経産省系のNEDOを含む現行の五機関から他の研究開発独立行政法人等にも拡大するということで取組可能性を更に広げることは、これは重要な意義があると考えております。
 さらに、今回の改正で、従来の四つの柱に加え、新しく加えられました二点につきましても、いずれも重要な観点と考えております。
 言うまでもなく、サプライチェーンは世界中に広がっておりまして、日本の国外にあるが事実上日本の安全保障上も重要というような設備、施設については、民間企業の経済合理性の判断のみではなかなか投資が十分に行われない可能性がある。したがいまして、そうした設備、施設、例えば外航船の燃料補給拠点などが挙げられておりますが、こうしたものをJBICを通じた支援の仕組みを整備することにより民間企業が投資しやすくするということは、まさに今後に向ける必要な取り進めと考えられます。
 最後は、経済安全保障シンクタンクと官民協議会の設置で、これも従来、一部に表現はあったかと思うんですけれども、今回初めてしっかりとした具体的な内容で登場したものであると考えております。
 まず、シンクタンクにつきましてですが、テーマとして、サプライチェーンやインフラリスク点検、技術などが挙がっております。どれも日本の安全保障にとって重要なものであり、こうしたことに対する調査研究、政策提言を官民双方の立場から集まった人材が担当して前に進めるというのは非常に重要なことと考えます。
 また、官民協議会につきましては、従来の各組織での調査、分析の取組、試行錯誤の中で、どうしても官と民、企業と企業といった情報の壁、守秘義務の壁がございまして、なかなか包括的な対策、議論が難しかったという実態踏まえ、考案されたものと想像しております。国家公務員と同等の守秘義務という前提も置きまして、満を持して内閣総理大臣を主宰者として設置されるというものでございまして、まずは各方面の期待がここに集まっているものと思料いたします。
 ポイントは、そこに集まった方々が具体的にどのような手法で何をしていけば期待する成果が得られるのか、そのために採用人材に求められる素養、経験値といったものは何か、そうしたことを解像度を上げて考え、採用し、動かしていくという遂行運用面にあると考えております。
 私の専門の立脚点は産業分析ということになりますので、特にその観点から、このシンクタンクと官民協議会の取組可能性につきまして、少し解像度を上げた御説明をしてみたいと思います。
 現在、テーマの例と挙がっているものは、サプライチェーン、インフラリスク点検、技術ということになりますが、この中で、やはりサプライチェーンが非常に難しい課題と認識しております。
 一方のインフラリスク点検につきましては、様々なインフラというものは単独で存立しているものはなく、電力と通信、陸上交通と海上、空路に加えまして、宇宙には人工衛星、海底ケーブルまで、実に様々なインフラが相互に深く連携、連動し、初めて社会基盤というものが具体的に成り立っているというふうに考えております。
 そのような中で、それらインフラの間で起こる可能性のある課題、相互依存性といったものをあらかじめ理解し、対処できるようにしておくことは非常に重要だと考えます。どこか一か所で起こったインフラの破壊、損壊、それから喪失がどのように他のインフラに影響を及ぼし、社会基盤自体の毀損につながっていってしまうのかを専門的に捉え返し、調べ、結論付けていく。これは、国家安全保障にとっても非常に重要な国民を直接守る取組と考えられます。民間企業からは専門性を持った方が着任し、一定のシナリオ、机上演習なども行う中でこうしたことを分析していくのは実際に可能であると思いますし、有効であると考えます。
 インフラの運営には、基本的に企業と企業又は政府と企業との間で契約というものが存在すると思います。その契約の中で、予期しない事態が起こった際に契約当事者がそれぞれ負うリスクの負担というものが定められます。例えば、政府と民間とが協力して公共インフラを展開するPPP、パブリック・プライベート・パートナーシップといった枠組みでは、このリスク事態は政府が責任を負う部分、このリスク事態は民間が責任を負うといった形で、お互いにしっかりと契約上で取決めをした上で進めるということになっていると思います。そうした不測のリスク事態を含めまして、契約面で詰めて議論できる方が各インフラの現場から集まり、それを政府の専門家の方が統括することで一定の成果を上げることは可能というふうに捉えております。
 また、技術といいますのも、主要国の技術政策動向ですとか戦略環境の変化等を踏まえた経済安全保障上の技術戦略を考案するということですので、これも、官民から集まった人材が政策を調べ、日本のあるべき姿を提言するということでありまして、十分に可能かつ重要な取組と考えます。
 課題はサプライチェーンと考えております。私自身、サプライチェーンにつきましては、産業分析の観点から過去二十年ほどにわたりまして関わってきておりますが、従来型の例えば製造業においては、既にサプライチェーンは公知の部分も多く、わざわざ分析するまでもないと考える方もいらっしゃると思います。例えば、自動車や家電などの組立ての部分というのはそういうことが言えるのではないかと思います。
 しかしながら、現在、経済安全保障上最大の戦略物資と考えられている半導体などを例に取ると、その製造工程は極めて複雑で、そこで使われております装置、材料、副資材などの幅の広さはなかなか総合的、包括的に把握することが難しい領域と認識しております。また、製品が機微になればなるほど企業としての守秘義務の壁が大変に高くなり、容易に他社に伝えるということができない材料情報などもあると認識しております。
 サプライチェーンにつきましては、中越沖地震や東日本大震災の頃から、一つの工場が被災したことによって停止してしまい、それが自動車の生産ラインを止めてしまうといったチョークポイントが存在することは多くの製造業の皆さんはよく御経験、御存じでありまして、既にかなり対応されてきている部分もあると思います。
 実際、製造業の皆さんに伺うと、部品の形になったものから先の下流につきましては、企業自身がその部品の仕様を決めて試験もして採用しているという事情もありまして、遡上調査は比較的やりやすい、既にやっているという企業さんもございます。ところが、更にその上流ですね、部品、例えばねじ一本、そういうちょっとした板というものがどんな原料を使っているかとなりますと、それはもはや鉱石の粉末であったり化学品であったりということになりますので、サプライチェーンをたどるのが非常に難しくなるという事情がございます。
 こうした最上流付近のサプライチェーンの解析こそが経済安全保障の観点では最も重要になりますが、例えば半導体向けにどんな純度のどんな素材を取り扱っているかということを他社に公開するというのは、企業としては恐らく非常に厳しいことでございまして、更に言えば、企業の中でもごく一部の方しかその情報を持ち合わせないといったことも指摘されております。そうなりますと、官民で集まったらすぐに何かの分析が仕上がるということではなかなか難しいという想定もございまして、今回、守秘についての配慮をしていただいたのが制度上極めて重要な観点というふうに考えております。
 大きな前進と思いますが、更なる取り進め上の留意点があるとすると、サプライチェーンの全体像を、これは地政学リスクの観点で何が問題なのかという観点で、文系的に、あえて文系という言葉を使ってしまいますけれども、文系的に捉えていく感覚と、もう一つ、具体的な調査はその素材、素材一つを例えば元素ベースで遡って理系的に丹念に精査していく、こういう文理にまたがるような知恵の出し合い方が重要になるのではないかと考えております。
 サプライチェーン上に存在します採掘、精錬、加工、部品加工、こういった各レイヤーの企業の特徴を理解しまして、それらのレイヤーのうち、どこがどのような付加価値を付けて次のレイヤーに商品を渡していっているのか、どこのレイヤーが最も大きな付加価値を与えている、ないしはチョークポイントになってくるのか、こういったことを各業界横断的に調査することで全容を把握していくことが重要と考えます。
 幸い日本には、各製造業の業界にこうした知見を持つ方がたくさんいらっしゃると思います。せっかくできますこのシンクタンクという場で、こうした専門性を持つ方々が集結して、日本の経済安全保障上のチョークポイントをあぶり出し、官民協議会を通じて対策を考案し、磨き上げていくと、こういう流れが一刻も早く立ち上がることが重要と考えております。
 冒頭指摘いたしましたように、現行の経済安全保障推進法が日本企業の中に経済安全保障の観点をしっかりと定着させつつあるというのは、それ自体大きな成果であると考えておりまして、その過程で課題の検討、対応が進んだことにより、更に解像度の高い課題認識が可能となってきたと認識しております。今回の一部改正の諸点が出てきたものと考えますので、是非これらの点を早期に実装し、さらに、今後に向け、中堅・中小企業や各日本の全国の地域に展開していくということを進めていただくことで、日本が経済安全保障先進国として立っていく礎を確固たるものにしていっていただきたいと考えるものです。
 私からは以上です。